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zoom RSS 小さいおうち

<<   作成日時 : 2014/02/13 14:33   >>

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小さいおうち   中島京子 著

直木賞受賞作で、最近では松たか子さん主演の映画にもなった作品です。

先ず読後の率直な気持ちですが、
思っていたよりも遥かに深淵な物語でした。

読み始めから、何となく予測出来る悲劇の気配に、
段々重苦しい気分になりつつも、
タキの回顧録が完成するかどうか気が気でなく、
後半は一気に読み込んで、しばし呆然・・・でした。


因みに、
映画のキャスティングは原作の登場人物のイメージにとても重なっていると思いました。
映像の方も機会が有ったらチェックしてみたいです。



以降ネタばれになるので、行を下げます。






























*****************************************

山形の農村に生まれたタキは尋常小学校を卒業した昭和5年に、
東京へ出てきました。
親類の伝手で裕福な家庭に女中として雇ってもらったタキは、
都会生活にささやかな夢や希望を託します。

タキは最初の奉公先で1年間働いた後、
その知り合い筋へ奉公先が変わります。
その家でタキ平井時子という若奥様と、運命的な出会いをしました。


物語は晩年のタキが、当時の回顧録を綴る形で進みます。
タキの思い出の平井家は、
わたし達が当時の資料写真等で一般的にイメージしている「不自由で暗くひもじい生活」よりも恵まれた、
むしろ今のわたし達よりも豊かな暮らしをしていました。

昭和10年代初めには、
昭和15年の東京オリンピック開催が決定し、
更なる経済効果を期待する社会の高揚感。
平井家の主人の仕事も、順調に回っていました。

この家庭は富裕層だったので、
ハイヤーで都心の洋食レストランに食事に出掛けたり、
夏は上司の鎌倉の別邸で過ごし、
年末年始の様子等は、まさに憧れの「日本の暮らし」そのもの。

カレンダー通りに休めない私にとっては、そうしたくても出来ない、
旧き良き時代の生活を平穏に送っていたのです。

良い時代だったと思い出を綴るタキに、
健史という甥の次男にあたる青年が、
社会科の勉強程度の知識を披露し、反論します。
2.26事件はどうした?
事変や虐殺が有った時期に、街でお祭り騒ぎなど不謹慎だ!
過去を美化するな・・、
と、
後の世に生まれた者の一方的で傲慢な主張をタキに向けます。

ですが、そもそもタキの優先順位は、終生そんな事では無いのです。
その危なっかしさが、
この物語の背後に漂う恐怖であり、
現代にも通じる危険性の正体だと感じます。

歴史的に見て、確実に訪れるだろう平井家の崩壊は、
すなわち「小さいおうち」の最期は、いつ、どのような形だったのか。
若奥様の時子と夫の部下:板倉との間に何が有ったのか。
核心に迫る手前で、
語り部:タキはこの世を去ります。


そして物語の最終章では、
語り手が健史に交替し、
物語のリズムが一変します。

タキと、
板倉の思いは、
いつの間にか健史の意識に刻まれていました。

現代に蘇った微かな手掛かり。
しかし謎は更なる謎を呼び、
残された者達は、二度と応えてくれない彼らに向かって問い続けるしかありませんでした。




問題の日。
板倉が入営の為に弘前へ帰省する日、
タキ時子の手紙を板倉へ渡しませんでした。
回顧録に綴った内容は、タキの後悔の念が書かせた想像図でした。






では、何があったのか・・・。
此処から先は、私の想像です。


タキは板倉を訪ね、
「戦争が終わったら奥様と逢ってほしい。だから必ず生きて帰れ」と告げたのではないかと・・・。
なまじ気働きが効いたタキが出した、当時としての最善策と考えます。
只、個人の思惑を超えた状況になった事と、
タキ自身気付いていない本心が、
あの判断をいつまでも責立て続けたのではないでしょうか。


板倉は敗戦色が濃くなった昭和18年の秋、南方へ送られました。
戦闘の真っ只中に放り込まれた板倉は、
本来、芸術や娯楽を愛した純真な青年でした。
生きて帰る為に何をしなければならないか。
矛盾に苦しめられ正気が保てなくなったとき、
板倉は何度も何度も「小さいおうち」を頭に浮かべたことでしょう。
同時に「小さいおうち」は、変わってしまった自分にとって近寄り難い聖域になり、
戦後、その存在が物理的に失われ、
彼はその後、狂気を秘めたカルト漫画家として、そして独身で生涯を送りました。
自分の死後に「小さいおうち」を世の中に残すためだけに働いたのではないか、とも思いました。



*****************************************







とても想像力を刺激される作品で、
いつもより長々とレビュしてしまいました。




小さいおうち (文春文庫)
文藝春秋
2012-12-04
中島 京子

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんわ。
読書家なんですねー。
読書は想像力のミナモト。
雑誌やテレビなどをぼ〜っと
みてたら脳が死に(?)ますね!
気をつけなくっちゃ
ROKO
2014/02/13 21:02
ROCO様
読書家なんて、とんでもない
只、何かインプットしたら、それについて何でもいいからアウトプットするぞ精神!…という感じでやってます
こんぺいと
2014/02/16 21:13

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